イエスは本当に復活したのですか(4)空になった墓

園の墓

この記事は、イエスの復活を歴史学的に検証するシリーズの第4回です。前回に引き続き、イエスの復活に関する歴史的事実を探ります。今回は、4つ目の「イエスの墓は空になっていた」という史実について検証します。

4.イエスの墓は空になっていた

聖墳墓教会
聖墳墓教会のロタンダ。下にある礼拝堂がエディクラ(写真:CBN Israel)

イスラエルの首都エルサレムに、聖墳墓教会という教会があります。

聖墳墓教会は、イエスの墓の遺跡の上に建てられた教会です。イエスの墓があった場所については長年論争がありますが、今では学問的、考古学的に、聖墳墓教会のある場所が最も有力であるということで意見が一致しています。

聖墳墓教会の中心には、ロタンダ(Rotunda)と呼ばれるドーム型の建物があります。この中には、さらにエディクラ(Edicule)と呼ばれる小さな礼拝堂が建っています。このエディクラの中に、イエス・キリストが埋葬されたとされる墓の石室があります。キリスト教の巡礼者は、この空になっている墓に列をなして入り、墓が空になっていることを確認して神を礼拝し、墓から出てくるのです。

それ以外の墓はすべて、墓の中に遺体や遺骨が納められていることが必須です。しかし、イエスの墓だけは、空になっていることが重要なのです。空の墓は、イエスが復活したことを証しするものだからです。

空になったイエスの墓の史実性

4つある福音書はすべて、イエスは十字架上で死に、墓に葬られた後、3日目によみがえり、墓は空になっていたと証言しています。

この「空になったイエスの墓」の史実性については、聖書を批判的に研究する一部の学者の間で疑問が持たれていました。しかし近年の研究の成果により、イエスの墓は空だったことを歴史的事実として受け入れる学者がかなり増えています。イエスの復活を50年以上研究しているゲイリー・ハーバーマス博士によると、イエスの墓が空になっていたことを歴史的事実として受け入れる学者は、1975年~2002年の研究論文では全体の約75%であったが1、現在では約80%に上ると報告しています2。そのため、全会一致とまでは言えなくても、圧倒的多数の学者、歴史家が、イエスの墓は空になっていたことを事実として受け入れていることになります。また、以下に説明するイエスの墓が空になっていたことを裏付ける証拠を見ると、実際に空だったと考えるのが最も自然な判断だと思います。

女性の証言

イエスの墓が空になっていたことが事実であることを示す第一の根拠は、最初の証言者が女性だということです。

この点は、現代ではピンとこないかもしれません。しかし、当時のユダヤ人社会では、女性の証言は信用されていませんでした。たとえば、ユダヤ教のタルムードでは「女の[提示する]証拠は無効である。また、女は証拠を提示する資格がない」と書かれています(付録「A. タルムード」参照)。ユダヤ人史家のヨセフスも「女性の証言は、その性分の軽率さと大胆さゆえに採用してはならない」と語っています(付録「B. ヨセフス」参照)。ひどい女性蔑視だと思いますが、ユダヤ人社会だけでなく、当時の地中海世界は、そういう価値観に支配されていたのです。

そのような社会で、もしイエスの墓が空になっていたことが作り話であれば、女性を証言者にはしないと考えられます。いずれにせよ女性の証言は採用されないのだから、ユダヤ人社会に受け入れてもらおうとするなら、男性を証言者にしたはずだからです。しかし、すべての福音書に、イエスの墓が空になっていることを最初に証言したのは、女性であったと記されています(マタイ28:1~10、マルコ16:1~8、ルカ24:1~9、ヨハネ20:1~2)。上記のような社会的背景を考えると、最初の証言者が女性だったと書かれているのは、事実そうであったからと考えるほかありません。

実際に、女性たちがイエスの墓が空だったと報告した時、使徒たちはその証言を信じようとしませんでした。聖書にはこうあります。

10  それは、マグダラのマリア、ヨハンナ、ヤコブの母マリア、そして彼女たちとともにいた、ほかの女たちであった。彼女たちはこれらのこと[イエスの墓が空になっていたこと]を使徒たちに話したが、 11 この話はたわごとのように思えたので、使徒たちは彼女たちを信じなかった。(ルカ24:10~11)

使徒たちが女性の証言を信じなかったのは、話自体が信じがたいことだったことが大きいのでしょうが、当時の女性に対する見方も背景にあったのかもしれません。

また、女性が最初の証言者であったというのは、教会の指導者となっていた使徒たちにとって都合の悪い情報です。使徒たちはユダヤ当局を恐れ、家に鍵をかけて閉じこもっていたのに対し(ヨハネ20:19)、女性たちは当局を恐れずイエスの墓を訪れたからです。これは「当人にとって都合の悪い証言」です。そのため、歴史学的には信憑性が高い情報として扱われています。

エルサレムで始まった宣教

イエスの墓が空になっていたことが事実であることを示す第二の根拠は、使徒たちがエルサレムで宣教を始めたことです。

ペテロを初めとする使徒たちは、イエスが十字架にかけられ、墓に葬られた場所であるエルサレムで宣教を開始したと聖書に記されています(使徒2章)。しかも、イエスが十字架にかけられたのと同じ年に、宣教を開始しています。正確に言うと、イエスが十字架にかけられたのが過越の祭りで、使徒がエルサレムで宣教を開始したのが五旬節(ペンテコステの祭り)です。この間、50日しか経っていません。そして、この時の説教で、使徒ペテロはイエスの復活を宣言したのです(使徒2:24)。

使徒たちがイエスの十字架からまだ時間が経っていない時に宣教を開始したことは、聖書に批判的な学者も認めるところです。キリストの復活を教える信仰信条が、早期に完成していたとみられているためです(記事「イエスは本当に復活したのですか(2)4つの事実」参照)。

このペテロの証言は、イエスが十字架にかけられて葬られたという出来事から、地理的にも、時代的にも近い証言です。そのため、歴史的資料として価値が高い証言です。この時、もしイエスの遺体がまだ墓にあれば、ローマやユダヤ当局が遺体を公開して、イエスが復活したという使徒たちの宣言を否定できたはずです。そうすれば、キリスト教という運動はすぐに勢いを失って、泡のように歴史の舞台から消え去ってしまっていたことでしょう。しかし、そうはなりませんでした。イエスの墓は空っぽで、ローマやユダヤ当局は遺体を人々に見せることができなかったためです。

敵対者の証言

イエスの墓が空になっていたことが事実であることを示す第三の根拠は、敵対者の証言です。

イエスの墓が空だったと語っているのは、イエスの弟子たちだけではありません。イエスの弟子たちに敵対していたユダヤ人指導者も、イエスの墓が空だったことを認めています。

ユダヤ人指導者は、イエスが復活したと宣言する弟子たちに対して、墓に葬られているイエスの遺体を指し示す代わりに、弟子たちがイエスの遺体を盗んでいったと主張しました(マタイ28:13~14)。つまり、墓には遺体がないことを間接的に認めているわけです。ユダヤ人指導者は、イエスの弟子たちの敵対勢力であるため、この発言はイエスの墓が空だったことの敵対者の証拠として貴重なものとなっています。

また、弟子たちがイエスの遺体を盗んでいったという話は、「今日までユダヤ人の間に広まっている」(マタイ28:15)と記されています。実際に、歴史的資料を見ても、イエスが復活したという証言に対してユダヤ人が挙げる反論は、これだけです。これ以外の反論を挙げたという記録は見つかっていません。

たとえば、殉教者ユスティノス(紀元110~165年)は、著書『ユダヤ人トリュフォンとの対話』で、キリスト教に反対するユダヤ人トリュフォンの言葉として次のように記しています。

前にも述べたとおり、あなたがたは選ばれた者たちを任命して全世界に遣わし、不敬虔で、律法も守らない異端がガリラヤの詐欺師イエスから生まれたのだと宣言させた。イエスはわれわれが十字架につけたが、イエスの弟子どもは夜陰に乗じ、十字架から降ろされ、墓に納められていたイエスを盗み出した。そして今では、イエスが死者の中からよみがえり、天に昇ったと主張しては人々を欺いているのだ。3

As I said before, you have sent chosen and ordained men throughout all the world to proclaim that a godless and lawless heresy had sprung from one Jesus, a Galilæan deceiver, whom we crucified, but his disciples stole him by night from the tomb, where he was laid when unfastened from the cross, and now deceive men by asserting that he has risen from the dead and ascended to heaven. ― Justin Martyr, Trypho 108

ユスティノスは、紀元2世紀の教会指導者です。上記を読むと、紀元2世紀の当時でも、イエスの墓が空になっていた理由としてユダヤ人が挙げるのは、「弟子たちが遺体を盗んだ」という主張だったことがうかがえます。

また、2~3世紀の教会指導者テルトゥリアヌス(160年頃~220年頃)も、キリストに敵対する者の言葉として「(キリストを指して)これは、復活したと言えるように弟子たちが[遺体を]密かに盗み去った者だ」と書き記しています(付録「C. テルトゥリアヌス」参照)。

当時エルサレムを支配していたユダヤ人指導者が「弟子たちがイエスの遺体を盗んだ」と言っていることは、イエスの墓が空になっていたことを間接的に認める重要な証言です。また、弟子たちがイエスの遺体を盗み出したという主張には、信憑性がありません。イエスの弟子たちは、イエスの復活を宣べ伝え、迫害を受けて多くの人が殉教していきました。イエスの復活が作り話であれば、弟子たちは自分たちが作り上げた嘘のために死んでいったことになります。しかし、人は自分が嘘とわかっていることのために死ぬことはできません。このことは、イエスの復活が事実であったことを指し示しています。

結論

イエスの墓は空だったという福音書の証言について、オックスフォード大学の教会史家、ウィリアム・ワンド(William Wand)は次のように語っています。

私たちが手にしている厳密な歴史的証拠はすべて[空の墓を]支持している。それを否定する学者は、自らの主張が科学的な歴史学的根拠に基づいていないことを認めるべきである。4

“All the strictly historical evidence we have is in favor of [the empty tomb], and those scholars who reject it ought to recognize that they do so on some other ground than that of scientific history.”

また、ロンドン大学の法学教授で、復活に関する著書もあるノーマン・アンダーソン(Norman Anderson)は、次のように語っています。

空の墓は、まさに岩のような存在だ。復活に関するあらゆる合理主義的な理論は、この岩に打ち砕かれて無に帰する。5

“The empty tomb, then, forms a veritable rock on which all rationalistic theories of the resurrection dash themselves in vain.”

今まで見てきた根拠や上記のような専門家の発言を踏まえると、イエスの墓が空になっていたという福音書の証言は、歴史学的に十分に信頼できると言うことができます。

空になった墓の持つ意味

空になった墓

イエスの復活は、神が人類の歴史上に残された、人が神を知るための大きな手がかりの一つです。この手がかりをたぐって、人は神の存在を知り、神のご計画を知ることができるようになっています。

そして、空になったイエスの墓は、神が存在し、神が人類の歴史に介入されたことがわかるように神が残された目に見える証拠です。この神の残された証拠をひと目見ようと、毎年何十万、何百万というキリスト教徒がエルサレムの聖墳墓教会を訪れるのです。

また、空になったイエスの墓は、死後の世界があること、永遠のいのちがあることのしるしでもあります。イエス・キリストは、次のように語っています。

25 イエスは彼女に言われた。「わたしはよみがえりです。いのちです。わたしを信じる者は死んでも生きるのです。(ヨハネ11:25)

キリストを信じる者は、死んでも生きる。これが聖書のメッセージです。それは、死後の復活と永遠のいのちが約束されているためです。そして、「死は勝利に呑み込まれた」(1コリント15:54)という聖書のみことばが成就するのです。

また、イエス・キリストは次のようにも語っています。

28 このことに驚いてはなりません。墓の中にいる者がみな、子の声を聞く時が来るのです。 29 そのとき、善を行った者はよみがえっていのちを受けるために、悪を行った者はよみがえってさばきを受けるために出て来ます。(ヨハネ5:28~29)

「墓の中にいる者がみな、子の声を聞く時が来る」とは、すべての人がよみがえってイエス・キリストの声を聞く時が来るという預言です。つまり、いつの日か、イエスだけでなく、あらゆる人の墓が空になる時が来ると聖書は語っているのです。ただし、よみがえって受けるのが(永遠の)いのちか、(永遠の)さばきかという違いがあります。この違いを生むのが、キリストを信じているかどうかです。神のみこころは、すべての人がキリストを信じ、永遠のいのちを持つことです。イエスは次のようにも語っています。

40 わたしの父のみこころは、子を見て信じる者がみな永遠のいのちを持ち、わたしがその人を終わりの日によみがえらせることなのです。(ヨハネ6:40)

キリストのもとに来る人は、終わりの日によみがえり、永遠のいのちが与えられます。

みなさんが永遠のいのちを受けて、神を知る喜びに満たされますようにお祈りいたします。

付録

A. タルムード

タルムード(Talmud)は、ユダヤ教の「口伝律法」と学者達の議論を書き留めた議論集です。ラビの教えを中心としたもので、現代のユダヤ教が聖典として認めているものです。一般的に使用されるバビロニア・タルムードの成立年代は、紀元450年~550年とされています。

タルムードは、女性の立場について次のように記しています。

女の[提示する]証拠は無効である。また、女は証拠を提示する資格がない。これは、ラビに強盗と判定された者が、女と同じ証拠を提出できる資格があると言うのと同じことだ。 ― 『タルムード』「ロシュ・ハシャナー」1.8

Any evidence which a woman [gives] is not valid (to offer), also they are not valid to offer. This is equivalent to saying that one who is Rabbinically accounted a robber is qualified to give the same evidence as a woman. (Talmud, Rosh Hashannah 1.8)

B. ヨセフス

ヨセフス (紀元37年~100年頃)は、 帝政ローマ期のユダヤ人政治家、歴史家。

ヨセフスは、女性の証言について、著書『ユダヤ古代誌』に次のように書き記しています。

しかし、女性の証言は、その性分の軽率さと大胆さゆえに採用してはならない。また、奴隷の証言も、その魂の卑しさゆえに認めてはならない。なぜなら、益を得ようと、あるいは罰を恐れて、真実を語らない可能性が高いからである。

But let not the testimony of women be admitted, on account of the levity and boldness of their sex, nor let servants be admitted to give testimony on account of the ignobility of their soul; since it is probable that they may not speak truth, either out of hope of gain, or fear of punishment. (Josephus, Antiquities 4.8.15)

C. テルトゥリアヌス

テルトゥリアヌス(160年頃~220年頃)は、2世紀の教会教父、キリスト教神学者。ラテン教父の最初の一人。西方教会の思想形成に大きな影響を与えました。

テルトゥリアヌスは、『見世物について』という著書の中で、当時、弟子たちがキリストの遺体を盗んだという主張が、2、3世紀の当時にもまだあったことを示唆する以下のような内容を書いています。

(キリストを指して)これはあの大工、雇われ者の息子であり、安息日破り、サマリア人、悪魔憑きではないか。……これは、復活したと言えるように弟子たちが[遺体を]密かに盗み去った者だ……

“This is that carpenter’s or hireling’s son, that Sabbath-breaker, that Samaritan and devil-possessed!… This is He whom His disciples secretly stole away, that it might be said He had risen again… ― Tertullian, Of Spectacles, Chapter 30 (Translated by S. Thelwall) (https://www.logoslibrary.org/tertullian/spectacles/30.html)

参考資料

  • Gary R. Habermas and Michael R. Licona, The Case for the Resurrection of Jesus (Kregel, 2004)
  • Gary R. Habermas, On the Resurrection, Volume 1: Evidences (B&H Academic, 2024)
  • John C. Lennox, Gunning for God: Why the New Atheists Are Missing the Target (Lion Hudson, 2011), Chapter 8 “Did Jesus Rise from Dead?”
  • Lee Strobel, Is God Real? (Zondervan, 2023), Chapter 4 “Easter Showed That Jesus is God”
  • Lee Strobel, The Case for Easter: A Journalist Investigates Evidence for the Resurrection (Zondervan, 2009)
  • Titus Kennedy, Excavating the Evidence for Jesus (Harvest House Publishers, 2022), Chapter 8, “The Burial, Tomb, and Resurrection of Jesus”

写真:Gary Todd (CC0)

脚注

  1. Gary R. Habermas and Michael R. Licona, The Case for the Resurrection of Jesus (Kregel, 2004) Kindle版, “4. A Quintet of Facts (4+1): The Last Three” ― “Gary Habermas discovered that roughly 75 percent of scholars on the subject accept the empty tomb as a historical fact.”

  2. Gary R. Habermas, On the Resurrection, Volume 1: Evidences (B&H Academic, 2024) Kindle版, “11. Minimal Fact 3: The Earliest Proclamation of the Gospel” ― “It will be argued below that there are many reasons that support the historicity of the empty tomb, and about 80 percent of critical scholars assessed in this present volume recognize the strength of these arguments.”

  3. Justin Martyr, Trypho 108 (https://www.logoslibrary.org/justin/trypho/108.html)

  4. William Wand, Christianity: A Historical Religion? (Valley Forge, Pa.: Judson, 1972), 93–94.

  5. Norman Anderson, The Evidence for the Resurrection, p.11.

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