チャールズ・バベッジ(数学者)「コンピュータの父」

チャールズ・バベッジ

チャールズ・バベッジ(Charles Babbage、1791~1871年)は、英国の科学者、数学者です。バベッジは「コンピュータの父」と呼ばれ、コンピュータ(計算機)の原型となるモデルを考案した人物でもあります。数学者であると同時に発明家として知られるバベッジは、コンピュータの原型のほかに、速度計や検眼鏡(目の検査に使う器具)といった機器も発明しています。

バベッジは、天地創造を信じるクリスチャンとして、科学と聖書の間に矛盾はないことを証明しようとしたことでも知られています。

幼少期

チャールズはロンドンで生まれますが、病弱でデヴォンという町で静養することになります。デヴォンで学校に通い始めたチャールズは、航海術と会計学のための初歩的な数学を学びます。この時に数学の興味が芽生えたチャールズは、ロンドンに帰ってからも学び続けて数学の才能を開花させ、ケンブリッジ大学のトリニティ・カレッジに入学します。

牧師を志すが数学者の道へ

バベッジは、数学に没頭し、フランス語で書かれた数学書を読みあさります。当時は、英国よりもヨーロッパ大陸の数学の方が発展していたためです。しかし、当時の英国とフランスの間には、ナポレオン戦争による対立があり、フランス革命のような反乱が英国で起こるかもしれないという怖れがありました。そのため、ブレーズ・パスカルなど、フランスの数学者や科学者を研究することは非愛国者的だと考えられていました。そして、バベッジのように欧州の科学を研究する者は、リベラル派の非愛国者というレッテルを貼られたのです。

バベッジは、結婚して牧師になることを志しますが、採用してくれる教会はありませんでした。リベラル派の非愛国者という評判のあるバベッジを教会の指導者が受け入れなかったためです。牧師になる道を閉ざされたバベッジは、数学の道を進むことになります。

コンピュータの原型を発明

バベッジは1826年から1835年までケンブリッジ大学の数学教授を務めます。その間に、コンピュータの原型を考案しています。

当時、さまざまな複雑な計算を手動で行っていましたが、計算間違いの危険性が常にありました。そのため、バベッジは「蒸気機関による自動計算機械」を構想します。それが、世界初のコンピュータの原型となる「階差機関」です。しかし、当時の技術では、制作には膨大な時間と費用がかかったため、最終的には資金不足で完成に至りませんでした。しかし、1991年にロンドン科学博物館がバベッジの設計書通りに階差機関を完成させ、バベッジの設計の正しさを証明しています。

ロンドン科学博物館の制作による階差機関
ロンドン科学博物館の制作による階差機関

その後、バベッジは、より汎用的な「解析機関」を考案します。パンチカードを使った情報の記憶や読み取りもでき、よりコンピュータの原型と呼ばれるにふさわしいシステムでした。この解析機関も、当時の技術では制作できませんでしたが、英国のプログラマ、ジョン・グラハム・カミングが再現プロジェクトを開始しており、現在クラウドファンディングで制作が行われています。

科学と聖書が両立することを論証

バベッジは、科学と宗教に関する論文集で、科学と聖書が両立することを証明するための論文を書いています。

この論文集は『ブリッジウォーター論集(Bridgewater Treatise)』(1833~36年)と呼ばれ、著名な科学者や哲学者の論考を掲載してシリーズで8冊が刊行されました。この論文集は、第8代ブリッジウォーター伯爵の寄付によって資金を得た英国王立協会(Royal Society)が編纂したものです。目的は、「天地創造に現れた神の力、知恵、すばらしさ」を探求し、説明することでした。この論文集は、さまざまなテーマを扱い、19世紀の科学と宗教の対話に大きく貢献しました。バベッジは論考で次のように記しています。

われわれは、人間の持つ最高、至高の能力を取って、想像力の中で無限の域にまで高め、われわれを取り巻くあらゆるものを創造された「無限の力」を、不完全であっても理解しようと努めるのである。

“We take the highest and best of human faculties, and, exalting them in our imagination to an unlimited extent, endeavour to attain an imperfect conception of that Infinite Power which created every thing around us.”1

聖書の奇跡を数学的に分析

バベッジは論考の中で、聖書の信頼性について詳しく論じています。バベッジは、奇跡を「発生する確率が極めて低くまれなもの」と定義し、聖書に記録されている奇跡を統計的に裏付けようとしています。バベッジは、奇跡について次のように語っています。

奇跡は、確立された法則への違反ではなく、それよりもはるかに高い法則があることを示すものである。

Miracles are not the breach of established laws but indicate the existence of far higher laws. 2

バベッジはこのように主張し、人が観察できる自然法則を破っているように見える奇跡は、より高次な「神の法則」に従っているのだとしました。バベッジは、さまざまな聖書の奇跡、特にキリストの復活を神の法則が働いた奇跡であると語り、聖書を受け入れない人々を説得しようとしたのです。

階差機関の写真:geni(ライセンス:GFDL CC-BY-SA)

参考資料

脚注

  1. Ray & Gale Lawson, “Charles Babbage: The Christian Mathematician,” Home School Enrichment Magazine, 23 May 2005

  2. Ray & Gale Lawson, “Charles Babbage: The Christian Mathematician,” Home School Enrichment Magazine, 23 May 2005

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