過去に成就した聖書預言(1)エルサレム崩壊の預言

過去に成就した聖書預言(1)エルサレム崩壊の預言

この記事は、過去に成就した聖書預言を紹介するシリーズの第一回目です。

MEMO
同じ内容が、YouTubeにも動画としても公開されています。

はじめに、このシリーズを始めようと思った背景から説明したいと思います。

はじめに

聖書は信頼できるのか

疑うおじさん

キリスト教では、聖書は「神のことば」と言われています。聖書になじみのない方は「本当にそうなのか」と疑問に思われると思います。また、聖書に書かれていることが本当にあったことだと信じてもいいのかと思う方もおられるでしょう。こうした疑問に答えてくれるのが「聖書の預言」です。

信頼性は過去の実績で決まる

次のように考えてみるとわかりやすいと思います。

実績のある医者

今から大手術を受けるのに、実績のない医者に自分の身を委ねたいと思う人はいません。信仰という人生の一大決心も同じです。過去に言っていたことがまったく当たっていない宗教を信じたいという人はいないと思います。聖書が信頼できるのは、過去に語られた多くの預言が成就して、現実となってきたからです。

預言が本当に成就していれば、預言以外の記述も信頼できるのではないでしょうか。

このシリーズの目的

このシリーズでは、過去に成就してきた聖書預言をいくつか紹介して、聖書が信頼できる書物であることを示します。聖書が信頼できる書物であるとわかると、聖書に記されている神が信頼できる方であることがわかってきます。

今回のテーマ

やる気のある子

第1回目である今回は、エルサレム崩壊の預言を見ていきます。エルサレムは、イスラエルの首都です。エルサレムは、過去に何度か敵の侵略を受けて破壊されています。実は、その都度、預言者たちが前もってそのことを預言しており、預言のことばどおりになっています。

MEMO
イエス・キリストはユダヤ人として生まれました。そのため、イスラエルの地に住み、何度もエルサレムを訪問しています。今回紹介するのは、そのようなエルサレム訪問時にイエスが語った預言です。

1. イエス・キリストの預言

ルカの福音書21:5~7には、次のような出来事が記されています。

5  さて、宮が美しい石や奉納物で飾られている、と何人かが話していたので、イエスは言われた。 
6  「あなたがたが見ているこれらの物ですが、どの石も崩されずに、ほかの石の上に残ることのない日が、やって来ます。」 
7  そこで彼らはイエスに尋ねた。「先生、それでは、いつ、そのようなことが起こるのですか。それが起こるときのしるしは、どのようなものですか。」 

イエスの弟子たちは、エルサレムを訪れ、神殿(「宮」)の美しさに目を奪われていました。その時、イエスは弟子たちに、エルサレムが破壊され、神殿が一つひとつの石の単位になるまでバラバラにされる時が来るという預言を語ります。それを聞いた弟子たちは驚き、そのようなことがいつ起こるのかとイエスにたずねたのがこの場面です。その答えが、ルカの福音書でイエスが語った次のことばです(ルカ21:20~21、24)。

20  …エルサレムが軍隊に囲まれるのを見たら、そのときには、その滅亡が近づいたことを悟りなさい。 21  そのとき、ユダヤにいる人たちは山へ逃げなさい。都の中にいる人たちはそこから出て行きなさい。田舎にいる人たちは都に入ってはいけません。 …
24  人々は剣の刃に倒れ、捕虜となって、あらゆる国の人々のところに連れて行かれ、異邦人の時が満ちるまで、エルサレムは異邦人に踏み荒らされます。

預言の成就(1)エルサレムの包囲

この預言は、紀元66年~70年に文字どおりに成就しました。イエスが預言を語った紀元30年頃から約40年がたっていました。預言が成就した経緯は次のとおりです。

まず紀元66年に、当時のイスラエルを支配していたローマ帝国にユダヤ人が反乱を起こしました(第一次ユダヤ戦争)。この反乱に対して、ローマは軍を派遣し、イエスが預言したとおりにエルサレムを包囲します。

預言の成就(2)信者のエルサレム脱出

イエスを信じるユダヤ人(ユダヤ人信者)は、これを見て、イエスの預言が成就しようとしていることを理解しました(20節「エルサレムが軍隊に囲まれるのを見たら、そのときには、その滅亡が近づいたことを悟りなさい」)。

ローマ軍はしばらくエルサレムを包囲しますが、反乱が大規模なのを見て、一時的に撤退します。エルサレムの包囲は、68年に再開されるまで、2年間ほど解かれていました。

この間に、ユダヤ人信者は、イエスのことばに従ってエルサレムを脱出し、ペラという町に逃れます(21節「そのとき、ユダヤにいる人たちは山へ逃げなさい。都の中にいる人たちはそこから出て行きなさい。田舎にいる人たちは都に入ってはいけません」) 。

ペラに逃れた結果、ユダヤ人信者は一人も命を失うことなく、この戦争を生き延びることができました。それは、イエスが預言していたとおりのことが起こり、その預言に従って行動したからです。

預言の成就(3)エルサレムの陥落

ローマ軍は、紀元68年に再びエルサレムを包囲します。ユダヤ人は2年間、エルサレムに立てこもってローマ軍に抵抗しますが、紀元70年にローマ軍の攻撃によってエルサレムは陥落します。

絵画『エルサレムの包囲と破壊』。19世紀イギリスの画家デイビッド・ロバーツ(David Roberts)作
19世紀イギリスの画家デイビッド・ロバーツ作『エルサレムの包囲と破壊』

預言の成就(4)神殿の破壊

この戦いで、ローマ軍はエルサレムの町に火を放ち、町中を火の海にしました。この時、神殿も火災で全焼します。神殿が全焼する時に、神殿の中に保管されていた大量の銀や金が溶け出ました。そして、金や銀は、神殿の土台となっている石の間に流れていきました。

ローマ兵は、町の火災が収まった後、神殿の石をすべて切り崩し、金や銀をすべて回収します。このようにして、イエスの「どの石も崩されずに、ほかの石の上に残ることのない日が、やって来ます」という預言が成就しました。

ユダヤ人の歴史家ヨセフスは、このような破壊を目の当たりにして、次のように嘆いています。

敵の手によって聖なる都が破壊され、聖なる神殿の土台がこのような冒涜的な方法で掘り起こされるのを見るぐらいだったら、その前に私たち全員が死んでいればよかったのに、と思わずにはいられなかった。
― 『ユダヤ戦記』(Josephus, The Wars of the Jews, Book VII, Chapter 8)

And I cannot but wish that we had all died before we had seen that holy city demolished by the hands of our enemies, or the foundations of our holy temple dug up after so profane a manner.

預言の成就(5)ユダヤ人の離散

この戦争の結果、110万人のユダヤ人が殺され、9万7千人のユダヤ人が奴隷として諸外国に連れて行かれました。イエスがルカ21:24で「人々は剣の刃に倒れ、捕虜となって、あらゆる国の人々のところに連れて行かれ」と言われていたとおりです。現在、ユダヤ人の共同体は、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ諸国など、さまざまな国にあります。そのような共同体が世界各地にできた最初のきっかけは、この戦争で世界中にユダヤ人が散らされたためです。

預言の成就(6)異邦人の時

イエスは「異邦人の時が満ちるまで、エルサレムは異邦人に踏み荒らされます」(21節)と語っていました。「異邦人」とは、ユダヤ人から見た外国人のことです。この言葉通り、この戦争以降、ユダヤ人はエルサレムから追われ、外国の諸勢力がエルサレムを支配する時代が続きます。1967年以降は、ユダヤ人国家であるイスラエルがエルサレムを支配下に置いていますが、この「異邦人の時」は今も続いています。このことは、現在のエルサレムの町を見るとわかります。

現代のエルサレム
現代のエルサレム

今も、神殿があったエルサレムの「神殿の丘」には、イスラム教の金のドームが立っています。「異邦人の時」が終わっていないことの象徴です。また、別の預言では、エルサレムが再び異邦人に占領されるとも言われています。この預言については、別の機会に解説したいと思います。

聖書預言の確かさ

ここで言っていることの基本的な部分は、歴史の教科書にも載っているような史実です。イエス・キリストが十字架にかかられたのが紀元30年頃です。一方、エルサレムが陥落したのが紀元70年です。イエスは、エルサレムが破壊される40年も前に何が起きるかを正確に預言していたことになります。

このイエスの預言が成就したことで、当時、多くのユダヤ人がイエスを信じたとも言われています。

次は旧約聖書の預言を見てみましょう。

2. 預言者ミカの預言

預言者ミカは、紀元前8世紀頃に南王国ユダで活躍した預言者です。ミカも、エルサレムの崩壊について次のように預言しています(ミカ書3:9~12)。

9  これを聞け。ヤコブの家のかしらたち、イスラエルの家の首領たち。あなたがたは公正を忌み嫌い、あらゆる正しいことを曲げている。 10  流血でシオンを、不正でエルサレムを建てている。…12  それゆえ、あなたがたゆえにシオンは畑のように耕され、エルサレムは瓦礫の山となり、神殿の山は木々におおわれた丘となる。 

「シオン」は、エルサレムの別名です。ここでは、イスラエルのリーダーの罪によって、エルサレムにさばきが下ることが預言されています。

預言の成就(1)タルムードの証言

ユダヤ教の経典『タルムード』によると、ローマ人はエルサレムを破壊した後、エルサレムを鋤で耕したという記録が残っています。ミカが「シオンは畑のように耕される」と言っていたとおりのことが起きたわけです。タルムードには、次のように記されています。

…(ユダヤ暦の)アブの9日に、われわれの祖先は聖地に入ることを禁じられた。この日に、第一神殿と第二神殿は破壊され、ベタルの町は奪われ、(エルサレムの)敷地は(畑のように)耕されたのだ。
ー “Tractate Taanit: Chapter 4” (https://www.jewishvirtuallibrary.org/tractate-taanit-chapter-4)

… on the 9th of Abh it was decreed that our ancestors should not enter the Holy Land; on that day the first and second Temples were destroyed, the city of Bethar was taken, and the site (of Jerusalem) was ploughed up (like a field).

エルサレムはローマに徹底的に破壊され、「瓦礫の山」となっていたことがわかります。

MEMO
ここで言う「ベタル」とは、エルサレムの南西に位置する町です。戦略上重要な天然の要害で、当時の重要な戦いが行われた場所でもあります。

預言の成就(2)ハドリアヌスコインの証言

ミカの預言が成就したことを証言してくれるものがもう一つあります。それが「ハドリアヌスコイン」です。ローマ皇帝のハドリアヌス帝(在位117年~138年)は、ローマ帝国内の各地を巡り、「ハドリアヌスコイン」と呼ばれる硬貨を多数発行していました。

このハドリアヌスが皇帝だった時に、ユダヤ人が再びローマに反乱を起こします。紀元132年に起きた第二次ユダヤ戦争(別名「バル・コクバの乱」)です。ハドリアヌス帝はこの反乱を136年に鎮圧すると、エルサレムからユダヤ人を追放して立ち入り禁止とします。エルサレムは完全に廃墟となった上に、ハドリアヌス帝の命令でエルサレム全域で建物が取り壊され、畑のように耕されます。このエルサレムの跡地に後に建てられたのが、「アエリア・カピトリナ」と呼ばれるローマ風の町です。このアエリア・カピトリナを記念して作られたのが、次のハドリアヌスコインです。

ハドリアヌスコイン
ハドリアヌスコイン

このコインの表(左)はハドリアヌス帝の肖像です。裏は、牛を使って畑を耕している風景です。これがアエリア・カピトリナを建設する前のエルサレムです。このコインは、ハドリアヌス帝の時代のエルサレムがどのような状態であったかを示しています。ミカの預言は、文字どおりに成就しました。

ハドリアヌスコインは今でもインターネット上のサイトで取引されています。

取引サイトのハドリアヌスコイン
取引サイトのハドリアヌスコイン

MEMO
このサイトを見ると、英語で「ハドリアヌス、117-138(年)、アエリナ・カピトリナ(エルサレム)、レア物」とコインの説明が書かれています。ハドリアヌスコインはたくさんの種類がありますが、エルサレムが描かれているものは希少価値があるようです。

3. 預言が与えられている意味

最後に、聖書で預言が与えられている意味を考えてみましょう。冒頭で、聖書預言が成就しているかどうかで、聖書の神が信頼できるかどうかを確かめることができると言いました。これは私が考え出したことではなく、神ご自身が語っておられることです。旧約聖書のイザヤ書では、「主(ヤハウェ)」と呼ばれる神は次のように語っておられます(イザヤ44:6~7)。

6  イスラエルの王である【主】、これを贖う方、万軍の【主】はこう言われる。「わたしは初めであり、わたしは終わりである。わたしのほかに神はいない。 
7  わたしが永遠の民を起こしたときから、だれが、わたしのように宣言して、これを告げることができたか。これをわたしの前で並べ立ててみよ。彼らに未来のこと、来たるべきことを告げさせてみよ。 

「わたしは初めであり、わたしは終わりである」とは、永遠の昔から永遠の未来まで存在する方という意味です。つまり、万物の創造主である神の自己紹介です。

「永遠の民」とは「古くからの民」という意味で、イスラエルの民を指します。イスラエルは、神の証人として古くから選ばれた民です。

「わたしのほかに神はいない。…未来のこと、来たるべきことを告げさせてみよ」というのは、未来に起こることを正確に告げることができるのは、真の神だけだということです。裏返すと、未来のことを正確に告げることができる方が神です。それ以外の「神」と呼ばれるものは、聖書の言う真の神ではありません。

結論:聖書に数多くの預言が記されているのは、人が真の神を知ることができるようにするためです。

まとめ

やる気のある子

今回は次のことを見てきました。

  • イエスの預言は文字どおりに成就した。
  • イエスだけでなく、預言者と呼ばれる人々の預言も成就している。
  • 聖書に書かれている預言は、人が真の神を知るために書かれた。

次回以降も、過去に成就した聖書の預言を紹介していきます。

参考資料

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