> エゼキエル26:12、19エゼキエル26:12、19
12 彼らはおまえの財宝を略奪し、商品をかすめ奪い、城壁を破壊し、住み心地のよい家を打ち壊し、石や木や土までも、水の中に投げ込む。
19 まことに、【神】である主はこう言われる。「わたしがおまえを廃墟の町とし、住む者のない町々のようにするとき、大水をおまえの上に湧き上がらせ、豊かな水がおまえをおおう」
> 解説解説
この箇所は、紀元前586年に預言者エゼキエルが語ったもので、都市国家のツロがどのように滅亡していくかを描写した預言です。
この描写は、マケドニアのアレクサンダー大王が紀元前332年にツロを包囲し、滅ぼした時の記録と一致します。本土側のツロを制圧したアレキサンダー大王は、島側のツロに到達するために、海を埋め立て、島側のツロと本土側のツロを結ぶ陸の橋を造ります(図1参照)。
陸の橋を架けた方法について、オックスフォード大学のジョージ・ローリンソン教授(歴史学)は次のように説明しています。
建設に必要な資材は豊富にあった。本土側のツロはすぐ近くにあり、一部は廃墟と化し、住民が放棄した多くの家屋があった。城壁には、石材、モルタル、瓦礫が豊富にあったはずだ。……根から抜かれ、枝がついたままの木を水際まで引きずり、海に沈め、その上に石と泥をかぶせて固めた。その上に別の木を載せ、また同じ工程が繰り返されたのである。(ローリンソン『フェニキアの歴史』第14章)
― Ray Coning and George Coning, 100 Fulfilled Bible Prophecies, 4th Revised Edition (Zealization Publishing House, 2022)
“Material for the construction was abundant. The great city of Palae-Tyrus was close at hand, partly in ruins, and with many of the houses deserted by their inhabitants. Its walls would furnish abundance of stone, mortar, and rubble. . . . Whole trees, torn up by the roots, and with their branches still adhering to them, had been dragged to the water’s edge, and then precipitated into the strait ; a layer of stones and mud had been placed upon them, to solidify them into a mass ; on the top of this other trees had been placed, and the former process repeated.” – Rawlinson, History
of Phoenicia, Chapter XIV.
このようにして、「城壁を破壊し、住み心地のよい家を打ち壊し、石や木や土までも、水の中に投げ込む」という預言は、アレキサンダー大王によって成就しました。
この方法で島側のツロを陸続きとしたアレキサンダー大王は、これまで難攻不落の城砦都市として知られていたツロを陥落させることに成功しました。これ以降、ツロの独立は奪われ、歴史の表舞台から次第に姿を消していくことになります。
その後、ツロは何度か再建されますが、アレキサンダー大王に破壊された爪痕は残っています。1100年代にツロを訪れたベンヤミンというユダヤ人は、次のような旅行記を残しています。
新しいツロの城壁に登ると、海に覆われた古代のツロが新市街のすぐ近くに横たわっているのを見ることができる。 また、船で沖に漕ぎ出せば、海底にある城、市場、通り、宮殿を見ることができる。(トゥデラのベンヤミン『トゥデラのベンヤミンの旅行記』)
― Ray Coning and George Coning, 100 Fulfilled Bible Prophecies, 4th Revised Edition (Zealization Publishing House, 2022)
“A man can ascend the walls of New Tyre and see ancient Tyre, Which the sea has now covered, lying at a stone’s throw from the new city. And should one care to go forth by boat, one can see the castles, market-places, streets, and palaces in the bed of the sea.” – Benjamin of Tudela, The Itinerary of Benjamin of Tudela.
陸地とつながったツロの島は今も残っていますが、島の南の部分は水没しています。トゥデラのベンヤミンは、この部分を見たものと思われます。このようにして、「わたしがおまえを廃墟の町とし、住む者のない町々のようにするとき、大水をおまえの上に湧き上がらせ、豊かな水がおまえをおおう」というエゼキエルの預言が成就しました。
古代のツロは、旧約聖書の預言どおりに滅亡しました。聖書のことばが正しいことは、史実によっても知ることができます。
> 参考資料参考資料
- Ray Coning and George Coning, 100 Fulfilled Bible Prophecies, 4th Revised Edition (Zealization Publishing House, 2022)
- “What Happened To Tyre?,” Bible Reading Archeology (https://biblereadingarcheology.com/2017/09/13/what-happened-to-tyre/comment-page-1/)
図1:Andrew Fountain (CC BY-SA 3.0)
写真1:フランス政府(パブリックドメイン)